友人と旅行と第二の故郷
18年間生まれ育った小さな故郷を出た後、進学で私は有名な温泉地のある県に引っ越した
決して都会ではないけれど住むのに不自由はしない。初めて暮らす場所だったけどそこにはなぜか懐かしさが漂っていた
4年間そこで暮らした
最初の方はきちんと人見知りを発揮したけれど、それでもたくさんの人たちと関わった
会ったら当たり障りのない会話をするだけの友人
バイト仲間の悪友
あんまり尊敬できない先輩
母国のことを教えてくれた海外留学生
見かけるたび目で追ってしまった顔がタイプすぎるバスケ部の上級生
初デートの相手
2度と目も合わせなくなった人
思い返せばたくさんの人がいたな
人生やり直せるスイッチがあったらきっと私はそれを押そうとするだろう
中学生くらいに戻って何もかもやり直すんだ
それでもそれを踏みとどまらせるものがあるとするならあの4年間でできた私の友人の存在だ
人生やり直して彼女に会えなくなるのなら人生やり直さなくていい
そう思わせてくれるくらい大切な
私の一番大切な友達
大学の部活に入部した時私たちは出会った
初めてその子を見た時、わぁ初めて会った気がしない。必ず仲良くなれる気がする。
そんな不思議な感覚に包まれた
あの子のことを名前で呼び始めることになんの照れも違和感もなかった
仲良くなるほど、今まで生きてきた時間ずっとこの子のことを知らなかったんだ。ずっと同じ時間を、別の場所で、それぞれ生きてきたんだ。そう思うとなんだか嬉しいような切ないような、何だかよくわからない気持ちが芽生えて少し泣いた
でももっと早く出会いたかったと思った
私たちは容姿も少し似ていた
初めからじゃない
一緒にいるうちに似ていった
温泉で会ったおばちゃんに、姉妹ですか、と聞かれていいえちがいます、と言った
彼女は人のために生きれるような人だった
とても気が利いていて、他人が困っていたら最後まで助けられる人だった
こんな人と結婚できる男の人は幸せだなと思った
彼女が2年付き合った彼氏と別れ、忘れられずに苦しんでいる姿を見るのは苦しかった
あなたみたいな男の人がいたら好きになるのに。
と彼女は私に言った
大学を卒業し、離れ離れになってからも、お互いの休みが合う日には会って話をした
4年間過ごしたあの土地を2人とも離れてしまったけれど、旅行ついでにまた遊びに行こうか、と話して、つい先月ちょっとした贅沢をしにあの土地へ向かったのだった
温水プールに入る水着を選んで体型を気にして人目を気にして、泥パックを全身に塗ったお互いの滑稽な姿に大笑いし、時間をかけて色浴衣を選んで、バイキングで食べ過ぎてケーキはおかわりして、アロマオイルのマッサージに行き、露天風呂に浸かって空を見上げて、あの雲ソフトクリームみたい。ほんとだね。と話をした
どこをどう切り取っても私たちは完全に女子だった
来年30歳になってもきっと変わらない
おばさんになってもこんなことしたいねって言った