ふりかえらない

 

小さい頃から慣れ親しんだ地元のジャスコが2月で閉店すると聞き、最後に行ってみようかと姉と話して今日行ってきたのです

見るだけで心を躍らせてた文房具屋さんは、薬屋さんになってたよ

幼い頃は広く大きく見えていた店内は

こんなに狭かったのか、こんなに天井が低かったのか

と自分の成長も同時に感じさせてくれました

私たちの唯一の娯楽だったジャスコ

今はイオンって名乗ってるけどさ

マンションに建て替えられちゃうんだって

おつかれさま

ありがとね今まで

 

 

 

昨年まで勤めていた職場もなくなってしまうと知った

最後にみんなで集まった

思い出話をしたり写真を撮ったりした

大好きだった場所

もう戻れなくなってしまった場所

でもこれからもずっと大切で自分の居場所

 

ありがとう

 

泣かないで背を向けて歩いた

振り向かないって決めて

 

私はもう後ろばかり見るのはやめるんだ

 

ひとりでも

30年近く生きてきて初めて、一人旅というものに行きました

行き先は鹿児島です

 

先月行った占いで、

南の方角、そうねぇ、鹿児島なんかいいんじゃない?吉方旅行って言うんだけど。行っておいで。できれば一人でね。そしたら気持ちも晴れてくるよ。

とお告げをいただいたのでした

 

 

 

 

鹿児島に行ったのは小さい頃に一度だけ

車の後部座席に姉と座っていると、前にいた両親が

ほら、見てごらん!あれが桜島だよ!

と騒ぎ立てたので、

なんだかわかんないが珍しいものなんだろう、と幼心に思った、という思い出だけが残っていた

 

 

 

新幹線に乗り、鹿児島中央駅で降り、近くのレンタカーでパッソを借りて、出発した

 

 

パワースポットに行くと良いよ。

と例の占い師から言われていたので、霧島神宮というところに行くことにした

 

霧島神宮の鳥居をくぐった瞬間、しん、として緑の匂いと音がした

2礼2拍手1礼

正解なんだろうか、後ろの人に早くしろよって思われてないだろうか、という、人の目を気にするいつもの悪い癖が邪魔して、ろくに神様に願うことも誓うこともせずに、お賽銭を200円入れてその場を降りた

おみくじをひくと大吉だった

 

霧島の温泉巡りを終え、指宿に向かった

霧島から指宿は車で2時間以上かかるので大変だということはわかっていたけど、どうしても指宿に行ってみたくて、車を走らせた

18時を過ぎるともう外は暗く、せっかくの指宿の海の景色も見えることなく、少し眠気と戦いながら気力で運転していた

 

予約していた指宿の宿は、素泊まりで5000円ほどの、コテージのようなところだった

目的地に近付くにつれ、街の明かりはなくなっていき、前も見えないほどだったのでハイビームをつけた

 

やっと到着した宿は、手作り感満載で暖かい雰囲気だった

手作りで小さな灯りを灯しているだけなので、周りが全く見えず、駐車場がどこなのかもわからず、右往左往して、とりあえず敷地内の広い場所に停めた

 

フロントのある棟に行きインターホンを鳴らすと、仙人のようなおじいさんが出迎えてくれた

これ、読んでくれた?と一言目に言われ、おじいさんの指差した机の上にある案内に目を落とすと、

『虫が出ます』と書いてあった

 

今の若い人はね、とくに女の人の一人旅なんかじゃ、ちょっと虫が出ただけでキャーキャー騒いでね。

田舎なんだから、当然なんだよね。

あなた、大丈夫?

 

うわぁ、と心の中で正直思ったけど、

田舎育ちなので大丈夫です!と笑った

 

それ聞いて安心した。

とおじいちゃんは初めて笑った

 

あなた、車どこに停めたの?

 

あ、車停めたんですけど、場所がいまいちわからなくて、合ってるかわからないです。

 

え?書いてあったでしょ、何箇所も。

 

すみません、暗くてちょっと、よくわかんなくて、、

 

田舎はね、暗いんだよ。

それに、昔は、日が落ちる前に宿に来ることが当たり前だったんだけどね。

 

 

もう私はこの仙人に戦々恐々としていた

 

 

私が停めた車を見た仙人は、

え、ここから入って、こう、

ここに停めたの?

こんな人は初めてだ。

と言った

 

案内するからこっちに停めて。

と言われ、ずんずん歩く仙人の後ろを車でのろのろと付いて行った

 

明日の朝出る時は、フロントのテーブルに鍵置いて勝手に出てね。

他になんか聞きたいことある?

 

いえ、大丈夫です!と精一杯笑った

 

もうなんでもいいから早く部屋に入りたかった

 

部屋に入ると、昔ながらの家の匂いがした。

座ろうとすると後ろに気配を感じ、振り返るとヤモリが壁をニョロニョロと素早く移動したのが見えた

半分心がくじけたけど、そいつは窓の近くにいたので、窓を開けたら外に出てくれるかもしれない、という期待を込めて、そっと開けた

すると窓のふちにいた別のヤモリが床にボトッと落ちてニョロニョロと動いた

咄嗟にギャーッと叫んだ瞬間、

『女の人の一人旅では特に…』と話す仙人のしかめた顔と、『それ聞いて安心した。』と笑った顔が浮かび、両手で口を押さえた

 

それでももうこの場所にはいられない、と思い、そっと部屋をあとにした

 

近くのネカフェにでも泊まろうと思い、車を走らせたけど、夜の指宿は暗く、店も見当たらなかった

 

半泣きで、急いで検索し、鹿児島市内のビジネスホテルをおさえた。

そこからまた先程の宿に戻り、そっと鍵をフロントに置き、その場を去った

ごめんねおじいちゃん

 

ビールでも飲みながら黒豚を食べたい、という願いもむなしく、後ろの車に煽られながらようやく鹿児島市内に到着した頃には飲食店は閉まってしまっていた

仕方なくホテルの目の前のセブンイレブンでビールと酎ハイを買い、カレーを食べた

 

 

気を失ったように眠り、朝目を覚ますと雨が降っていた

せっかく市内に来たし、展望台に登って桜島を見ようとか、西郷隆盛の像を見に行こうとか思っていた気持ちは崩れてしまった

 

ガイドブックを開き、あぁそうだ、

水族館があった。

ジンベエザメのいる水族館だ!

と気づいたら体が動き出し、すぐに準備して外へ出た

モーニングのあるカフェを見つけて入った

とても、とてもおいしいライ麦パンを食べた

 

 

エスカレーターを上がるとすぐに大水槽があり、ジンベエザメが悠々と泳いでいるのが見えた

名前は「ユウユウ」だった

来て良かった、と心から思った

 

 

お土産を選ぶのに四苦八苦し、

レンタカーを返しに行った

ありがとうございました、と言うと

大丈夫ですか?と言われた

ぶつけたりすることもなかったので、大丈夫です。

と笑うと、

いえ、ご自身がですよ。

と、店員の女性は雨の降る外を指さした

駅、近いので急いで行きます

と言うと、ビニール傘があるかもしれないのでちょっと待ってください、と探し始めたので、

返す機会がないからいいですよ、と言うと、

プレゼントです、と透明の小さなビニール傘を手渡してくれた

お気をつけて。

と言われて思わず涙目になってしまった

ありがとうございます。お世話になりました。

と頭を下げた

 

劇場

 

曲や映画など

好きになると何度も何度も聴いたり見たりする

TSUTAYAに行っても何度も同じものを借りる

また?って人に言われる

歌詞や台詞をほとんど覚えてしまっても続く

ハウルの動く城のセリフは体に染み付いてるし

何百回も何千回も私のイヤフォンの中で歌わされて野田さんはうんざりしてないだろうかと心配になったりする

 

そういったレパートリーに最近加わったもの

プライムビデオで見た『劇場』という映画

一度見ただけでその台詞や光景が胸に焼き付いて

離れなくなって

感動とか共感とかとは近いようで少し離れた何とも言い表せない感情に襲われ

苦しくて動けなくなり

いつものごとく2、3日は引きずった

 

 

 

大切な人が笑っている怒っている

なにもなくてもそばにいる

今は会いたくないと思う

長年そばにいると嫌でも伝わる気持ち

見ないふり

罪悪感

焦燥感

どうしようもなく愛おしい気持ち

慣れすぎた肌に触れる感触

どうしようもできない気持ち

 

 

 

 

そういうものが集まっていて

どこかで知っているその気持ちに胸を掻きむしりたくなる思いだった

 

 

見るたびそういう思いになるのに

繰り返し見てしまう

 

 

f:id:yuupf:20211006220440j:image

 

やってみよう

今日は晴れだ

 

やろう、いつかやろう、と思いながら踏み出せずにいたことに今日ついに踏み出した

 

楽器は気持ちを表現することが下手な私を手伝ってくれる優しい味方だ

小さい頃から楽器が大好きで得意なことはそれだけだった

10年以上やってきた楽器があるけど、それとはまた別に、新しくやってみたいな、と思っていた楽器がいくつかあって

そのレッスンに今日ついに行ってきたのでした

 

 

ドレミファソラシドから教えてもらった

また、ここから始まるんだ!と思った

素敵だ

 

好きなことで新しく人との繋がりが生まれることも、なんて素敵なことなんだろう

 

まだドキドキしながら、帰り道は青い車で遠回りして帰った

窓を開けたら風が吹いて

最近の心の不調を吹き飛ばした

火照った顔を水のペットボトルで冷やした

WANIMAの『やってみよう』を聴いた

 

今日は晴れだ

 

イオンのことジャスコって言いたいの

 

 

ひとりでイオンに行った

雑貨屋でサングラスの試着をした

鏡で見て、自分の姿に少し笑って、

誰にも見られていないか周りを確認して、元の場所に戻す

これを繰り返して、これならなんだかいいんじゃないかなぁ、ちょっと似合うんじゃないかなぁと思えるものに出会ったので、手に取って思い切ってレジに向かっている途中、

大きなサメと目が合った

両手を広げたほどの長さもある、ふわふわのそいつを、とても連れて帰りたくなった

抱っこしてレジに連れていった

店員さんに笑われるかなぁ、

と思いながら若い女性の店員さんの顔をチラッと見ると、新人さんのようだった

アラサーの女が1人で大きなサメのぬいぐるみを買おうとしていることなんか気にしている余裕はない

レジの操作や仕事のことでいっぱいいっぱいになっている表情をしていた

奥から多分ちょっと偉い人なんだろうな、というような雰囲気を醸した40代か50代くらいの男の人が出てきて、新人女性に仕事を丁寧に教えた

とても優しい物言いに好感を持った

 

笑顔の男性は私の顔を見て

このサメ…どうしますか?

と持ち帰りの方法を尋ねてきた

 

本当はこのふわふわちゃんを抱いてイオンの中を連れて回りたい気持ちだったけど

両手を広げたほどの長さもあるサメのぬいぐるみをまぁまぁ大人の女性が1人で抱いてウロウロしていたらきっとジロジロ見られてしまう

逆の立場なら私もきっと

あっ、あの人、、

と一瞬凝視した後、見ないようにすると思った

 

袋…ありますか?

とおそるおそる聞くと

ありますよ!と少しホッとしたように大きな袋にサメのふわふわを入れてくれた

サメと目が合った

ごめんね、と思った

タグを見ると『シャークッション』と書いてあり、

「シャーク」と「クッション」を掛け合わせた名前なんだと一瞬で理解した

とても安易だ

サメのぬいぐるみとサングラスを一緒に買うって変だな、などと思いながらレジを後にして歩いていると

 

ジョーズくん、売れたね!」

と嬉しそうに笑う男性と新人女性の声が聞こえた

 

 

あぁジョーズくんを買って良かったなぁ、と心から思った

 

車に戻り、助手席にジョーズくんを乗せ、買ったサングラスをかけてもう一度鏡を見ると、フィンガーファイブみたいな自分の姿があった

 

ジョーズくんが口を開けて笑った

 

とりとめもない

 

 

 

4月から環境が大きく変わって数ヶ月

目まぐるしく生きていました

生きていくっていうのはほんとに

いつの時代も変わらず大変なんだろうな

コロナのワクチンの2回目をつい先日接種して

数年振りに高熱を出して

あーきつい、ほんとにもう、きつい。

寝たいのに眠れない。ポカリがぬるくてまずい。

などと1人でうなされながら2回ほど解熱剤を飲むと平熱に戻り正気を取り戻したのでした

それにしても3日も仕事を休むと行きたくなくなるもんだな

あーこのままやめたい。とつぶやいてみたけれど眠る前にはきちんと6時半にアラームをセットするのです

1人で時間を持て余すことが好きなはずなのに

きっとそれが向いてないんだということに気付いた

余計なことを考えてしまう

いや余計なことではない

今、平気で生きていくためには余計なこと

なんであの時こうしなかったのかな

もっと優しくなれなかったのかな

時間を戻せたらな

などとつらつら頭の中でつぶやいて自分でも気付かないうちに涙が流れてきている

もう何度目だろうか

「心が弱っているよ」

と姉にメッセージを送ってみると

羊の毛刈り動画を見ると心が落ち着くよ、という

貴重なアドバイスをいただきました

幸せになりたいってみんな言うけど何をもって幸せというのかね

あぁ完全に余計な思考だ

 

落ち着くためには今日もバスクリンを入れて長めに入浴することだ

それしかない

 

 

おひっこし

 

 

おひっこしをした

何度目だ

8回目くらいか

迷ってばかりの人生だったなあ

 

新しい環境が苦手だというのに

それでも飛び込んでしまう

怖いよー怖いよー言いながら

 

大好きな居場所を離れるのは寂しかった

ドライフラワーの花束をもらった

大人びた顔をしたチューリップ

すでに枯れているから枯れる心配をすることはない

欲しいと言ってたスニーカーは

カラフルな模様のついた緑色

写真や寄せ書きと一緒にもらった

 

住み慣れた土地に私は戻ってきた

温かさは足りないけど干渉はされない

自由に生きていくことができる場所

わたしはここが好きだ

 

ドライフラワーと写真を飾った

部屋の片付けが落ち着いて

テレビをつけると高校野球があっていて

がんばれ、と呟いた

延長の末ワイルドピッチでサヨナラ負けしたピッチャーに想いを馳せた

 

自転車を買った

薄紫色のきれいな自転車

私は自転車が好きだ

店員さんは笑っているのか怒っているのかわからない顔をしていて

居心地が悪くなってすぐに店を出た

海の方まで行こう、と思ったけど

今日は寒かったことに気づいた

 

部屋に戻った

アロマを入れた加湿器のおかげで甘い匂い

することがない、と思った

したいことはたくさんあるのに

 

テレビの中の誰かが何かを言って

なんとなく笑った

あははっ

1人分の声がコンクリートの壁に

しん、と吸い込まれた

 

スマホが鳴って

大好きな職場の先輩からのメッセージが表示されていた

「今日は寂しいやろ?」

 

ようやく私は泣いた