思って思いだして

 

運転席の目の前に芳香剤を置いた

 

車の芳香剤は苦手だったけどあの人が選んだ物ならどんな香りでも嬉しかった

 

淡い水色からとても甘い香りがした

 

 

 

エンジンオイルを交換しにイエローハットに行った

 

大切な愛車の点検をしてくれた

 

男に生まれていたら自動車の整備士になりたかったな、となんとなく思った

 

男に生まれていたらタバコをふかして大きいSUVに乗り、優しい女の人と結婚したい

 

生まれ変わるなら男がいいな

 

女でいるには可愛げもしたたかさも私には足りなかった

 

車の点検が終わるのを待っている時、自動販売機が目に入った

パイナップルジュースがひどく魅力的に目に映った

 

130円入れてボタンを押し、ジュースを取り出す

 

そんな普通の行動でも、人に見られていることを意識するとなんだか恥ずかしくなった

 

いつだって人の目が気になってしまう

自分の嫌いなところの一つ

 

冷たい汗をかいたアルミ缶を掌でぎゅっと包み込むと心が温かくなった

 

幼い頃家族でドライブして、自動販売機でジュースを買ってもらっていたことを思い出して嬉しくなる

 

すぐに飲みたかったけれどなんだか人の目が気になり、あとで車の中で1人になってからにしようと考える

 

担当の整備士さんが優しく説明してくれる

それだけでとても嬉しく感じる

 

車に乗り込み走り出すと、オイルを新しくしてもらった愛車の喜びが自分にまで感じられるようだった

 

母の誕生日プレゼントを買いにショッピングセンターに向かう

 

 

 

仕事が終わり帰って良い時間になってからも仲の良い上司と2人で職場に残り、話をしていた昨日のことを思い出す

 

誰にも言えなかったこと

自分の口から出てくる本音に泣きそうになりながら少しずつ話した

 

言葉を口から出すたびに心の重さが一つずつ軽くなっていくのを感じていた

 

今年50歳になる上司は

20代の私と変わらない目線で話をするほど若く、それでいて安心感があり、あぁ私はこんな人になりたいんだなと思った

 

今も娘たちの前で旦那に「好きって言って」って言うよ。歳なんか関係ないけんね

 

と幸せそうに言った

 

それはあまりにも素敵なことすぎて

今の自分とはかけ離れたことに思えた

 

あぁ私はこんな人になりたいんだなと思った

 

 

 

車を走らせる

 

愛車の軽と一緒に歌う