大人になった瞬間
もうずいぶん前の話にはなるけれど
20歳の誕生日を迎えた瞬間、私は公園のブランコに座っていた
20歳になる
ただそれだけのことなのに
なんだか憂鬱で怖くて
その瞬間を部屋で迎えることが嫌で
少しでも気を紛らわそうと1人で最寄りの公園に行ったのだった
ただ感傷に浸りたかっただけなのかもしれないけど
これまでのことを少し考えたりした
真冬の真っ暗な公園のブランコに1人で座って折りたたみ式の携帯電話の画面に表示されているデジタルの時計をただ眺めていた
0:00
そう表示された瞬間
メールが何通か届いた
少し経って、着信があった
電話に出ると、大学でできた一番仲の良い友達の声がした。
「部屋に入れてください、、」
0時になった瞬間を見計らって私の部屋に来て祝おうとしたけどピンポン鳴らしても返事がなく、外で震えながら待っていたらしい。
最寄りの公園から走って帰った。
メールは地元の友からで、
長文のお祝いだった。
泣きながら走った。
何を考えていたのだろうか
私のことを想ってくれる人がこんなにいるのに
アパートの私の部屋のドアの前では、友人たちと、お世話になっていたサークルの先輩が、ケーキを持って待ってくれていた。
顔を見た瞬間また泣いた。
1人で公園に行っていたと話すと、
意味がわからんと笑われ、なんだかほっとした。
母親から、私が生まれてから今までのことを思い出して書いたというメールが送られてきた。
私はその日の夜母に電話し、20歳の誕生日に言おうとずっと決めていたことを言った。
思っていても決心しないとあまりに照れ臭くて言えない言葉だった。
産んでくれてありがとね。
少し早口でそう言うと、
あんたがそんなこと言うようになったとね、
と母は涙声になった。
20歳の記念に、と親からお金をもらった。
私はそれで3DSを買った。
姉に話すと驚愕していた。
私は20歳の誕生日にもらったお金でちゃんとしたお財布を買ったよ!と言われ、
へん、そんなものよりこっちの方がいいやい、と
当時の私は思ったのだ。
今の私はそれには到底共感できないけれど。
そんなことをふと思い出したのは
NINTENDO 3DSシリーズ生産終了というニュースを見たからだ